2021年4月1日付けで国道458号が区域変更! どのように経路変更したの?
山形県内で完結する路線でありながら、ダート区間や迷走区間、狭隘区間など、いろいろな意味で道路マニアに愛される一般国道458号。その国道458号について、令和3年4月1日付けの「山形県公報」令和3年号外第16号に、次のような2つの告示が掲載された。(一部デザインや表記を改めている。原文はこちら)
山形県告示第264号
道路法(昭和27年法律第180号)第18条第1項の規定により、道路の区域を次のとおり変更した。
なお、関係図面は、村山総合支庁建設部建設総務課において令和3年4月1日から同月15日まで縦覧に供する。
令和3年4月1日
山形県知事 吉村美栄子
1 道路の種類 一般国道
2 路 線 名 458号
3 変更の区間並びに当該区間に係る敷地の幅員及びその延長
区間 | 旧新の別 | 敷地の幅員 | 延長 |
寒河江市大字平塩字山崎2248番から 東村山郡中山町大字柳沢字深山前504番8まで | 旧 | 16.3メートル ~ 3.5 | 2,894メートル |
東村山郡中山町大字小塩字石名坂1077番2から 同 柳沢字権三郎422番5まで | 新 | 50.3メートル ~ 8.5 | 3,753メートル |
山形県告示第265号
道路法(昭和27年法律第180号)第18条第1項の規定により、道路の区域を次のとおり変更した。
なお、関係図面は、村山総合支庁建設部西村山建設総務課において令和3年4月1日から同月15日まで縦覧に供する。
令和3年4月1日
山形県知事 吉村美栄子
1 道路の種類 一般国道
2 路 線 名 458号
3 変更の区間並びに当該区間に係る敷地の幅員及びその延長
区間 | 旧新の別 | 敷地の幅員 | 延長 |
寒河江市大字平塩字山崎2184番から 同 2248番まで | 旧 | 6.6メートル ~ 4.5 | 334メートル |
寒河江市大字平塩字山崎2172番1から 同 736番1まで | 新 | 21.0メートル ~ 15.0 | 360メートル |
この告示がどのようなことを意味するのか、少しずつ説明してみようと思う。
まず、「道路法(昭和27年法律第180号)第18条第1項の規定」というのを見てみよう。
道路法第18条
(道路の区域の決定及び供用の開始等)
第十八条 第十二条、第十三条第一項若しくは第三項、第十五条、第十六条又は前条第一項から第三項までの規定によつて道路を管理する者(指定区間内の国道にあつては国土交通大臣、指定区間外の国道にあつては都道府県。以下「道路管理者」という。)は、路線が指定され、又は路線の認定若しくは変更が公示された場合においては、遅滞なく、道路の区域を決定して、国土交通省令で定めるところにより、これを公示し、かつ、これを表示した図面を関係地方整備局若しくは北海道開発局又は関係都道府県若しくは市町村の事務所(以下「道路管理者の事務所」という。)において一般の縦覧に供しなければならない。道路の区域を変更した場合においても、同様とする。
2 道路管理者は、道路の供用を開始し、又は廃止しようとする場合においては、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公示し、かつ、これを表示した図面を道路管理者の事務所において一般の縦覧に供しなければならない。ただし、既存の道路について、その路線と重複して路線が指定され、認定され、又は変更された場合においては、その重複する道路の部分については、既に供用の開始があつたものとみなし、供用開始の公示をすることを要しない。
ちょっと長くて分かりにくいので、この第1項をかんたんにすると、次のようになる。
道路法第18条(かんたん)
(道路の区域の決定及び供用の開始等)
第十八条 道路管理者は、路線が指定され、又は路線の認定若しくは変更が公示された場合においては、遅滞なく、道路の区域を決定して、国土交通省令で定めるところにより、これを公示し、かつ、これを表示した図面を道路管理者の事務所において一般の縦覧に供しなければならない。道路の区域を変更した場合においても、同様とする。
2 (略)
少し分かりやすくなっただろうか。今回は一般国道458号の話なので、道路管理者は「山形県」ということになる(国道には、国(国土交通大臣)が管理する国道と、都道府県が管理する国道とがある。458号は後者である)。
一般国道の路線の指定は、道路法第5条の規定に従って、政令(内閣が出す命令)によって行われるが、その「路線の指定」は、「路線名、起点、終点、重要な経過地」を表記することによって行われる。具体的には「一般国道の路線を指定する政令」(昭和40年政令第58号)で指定されていて、国道458号については、
路線名:四百五十八号
起点:新庄市
重要な経過地:寒河江市 山形県西村山郡大江町 山形市(菅沢)
終点:上山市
と定められている。ここまでは政令で定められているのだ。
だが、実際に新庄市のどこから始まって、どんなところをどのように通る、どんな太さの道路なのか、というところまでを政令で決めていてはキリがない。そこで、道路法第18条では、これよりも細かい「道路の区域」の決定について定めており、「道路の区域」は道路管理者(山形県)が決定して公示だけすればいいということになっているのである。そして、区域の変更も、道路管理者が決定することができることになっている(公示は必要だが)。
区域の変更には、ちょっとした道路の拡幅の場合もあれば、カーブの線形改良や橋の架け替えなど、線形が変わる場合もあるし、そもそも経路自体が大きく変わることもある。国道458号の場合で言えば、政令には「新庄市から始まって、寒河江市と大江町と山形市菅沢を通って上山市で終われ」としか書かれていないので、その条件に従ってさえいれば、道路管理者である山形県が自由に(現実にはそんなに自由ではないのだろうが)経路を変更できるのだ。
それを踏まえて、最初の2つの告示を見てみる。これは、国道458号の道路区域の変更の公示である。ここでは2つになっているが、それは中山町の道路を所管しているのが村山総合支庁建設部建設総務課で、寒河江市の道路を所管しているのが村山総合支庁建設部西村山建設総務課だからであり、実質的には、1つの区域変更である(図面の縦覧場所が異なるため、2つに分けているに過ぎない)。2つの告示を組み合わせてみると、次のような区域変更であると推測できる。
区間 | 旧新の別 | 敷地の幅員 | 延長 |
寒河江市大字平塩字山崎2184番から 東村山郡中山町大字柳沢字深山前504番8まで | 旧 | 16.3メートル ~ 3.5 | 3,228メートル |
寒河江市大字平塩字山崎2172番1から 東村山郡中山町大字柳沢字権三郎422番5まで | 新 | 50.3メートル ~ 8.5 | 4,113メートル |
そして、それぞれの始点である「寒河江市大字平塩字山崎2184番」と「寒河江市大字平塩字山崎2172番1」は、同じ大字の近い数字の番地であることから、同一交差点であると推測される。ただ、Mapion、Yahoo、Mapfanとも、住所一覧検索で近い番地は掲載されておらず、大字平塩の中のどのあたりなのかははっきりしない。
しかし、それぞれの終点である「東村山郡中山町大字柳沢字深山前504番8」と「東村山郡中山町大字柳沢字権三郎422番5」については、Mapionの住所一覧検索にそれぞれ「中山町柳沢504」と「中山町柳沢422」が掲載されており、「豊田駐在所」の南西にある交差点と推測できた。
また、「旧」と「新」では、延長が「3.2km」から「4.1km」に大きくのびており、大規模な経路変更がなされたと推測できる。
では、どのように変更されたと推測できるか。まず、終点と延長が分かっているのだから、「旧」のほうは、終点からもともとの458号を北へ3.2kmたどっていけばよい。すると、国道458号と県道26号の交差点(寒河江市大字平塩地内にある)が始点だと推測できる。
そして、「新」のほうの経路についても、私には心あたりがあった。かつて、山形県野球場がある中山公園の南西、県道24号と町道の信号機のあるY字交差点から100mほど南へ町道を進んだところで、このような看板を見て、思わず携帯で写真を撮ったことがあった。携帯のフォルダをさかのぼってみると、2018年11月23日の夜に撮った写真であった。

町道のはずなのに、工事看板に「一般国道458号道路改良工事」と書いてあり、発注元も中山町ではなく山形県だったのである。帰宅後、山形県公報を読み漁った結果、次のような告示が見つかった。今から5年前、平成28年3月1日付けの県公報第2726号に掲載されたものである。
山形県告示第206号
道路法(昭和27年法律第180号)第18条第1項の規定により、道路の区域を次のとおり変更した。
なお、関係図面は、村山総合支庁建設部西村山建設総務課において平成28年3月1日から同月14日まで縦覧に供する。
平成28年3月1日
山形県知事 吉村美栄子
1 道路の種類 一般国道
2 路 線 名 458号
3 変更の区間並びに当該区間に係る敷地の幅員及びその延長
区間 | 旧新の別 | 敷地の幅員 | 延長 |
寒河江市大字平塩字山崎2172番1から 東村山郡山辺町大字大寺字竹ノ花1147番3まで | 旧 | 27.0メートル ~ 4.4 | 5,697メートル |
同上 | 新 | 27.0メートル ~ 4.4 | 同上 |
東村山郡中山町大字岡字経田466番17から 同 長崎字三千刈8557番まで | 新 | 52.6メートル ~ 21.8 | 1,027メートル |
地図サイトの検索では、「中山町岡466」も「中山町長崎8557」もまったくヒットせず、どこのことを言っているのかはよく分からないが、ともかく既存の458号の区域はそのまま残した上で(だから「新」が2段になっている)、長さ1,027m分の新たな道路区域を平成28年3月の時点で設定していたことが分かる。そして、工事看板の記述の内容から、この1,027mの区間が、県野球場南西の交差点付近なのではないかと推測されたのであった。
また、今回、さらにインターネット上で調べてみたところ、中山町議会が発行している『なかやま議会だより』の(令和)第11号の10ページに、県野球場の南西の交差点について述べた部分があり、
前回の「なかやま議会だより」第10号9ページ、佐竹議員の一般質問の記事に「国道458号との表現は誤りではないか」とのお問い合わせをいただきました。 調査の結果、当該箇所は県道・町道の分岐点にあたること、あわせて道路改良工事中により「国道458号」の指定も受けていたため、誤りではありませんでした。 お問い合わせをいただいた方に、上記の旨回答させていただいたことをご報告いたします。
『なかやま議会だより』第11号(令和元年11月1日)10ページ 下線は当サイト管理人による
とのことであった(なお、原典には分かりやすい地図も添えられているのでぜひ見てほしい)。
ということで、ここまでくれば、今回の令和3年4月1日付けの道路区域変更がどのような経路変更であったのかは、推測可能である。下の地図の灰色線が「旧」の経路、赤色線が「新」の経路(推測)である。あくまで推測にはすぎないが、Mapfan で距離を測定したところ、おおむね告示の「延長」と一致した。
今回の経路変更により、国道458号線の名物の一つであった住宅街の間の狭隘区間の一部が姿を消すことになる。県道の区域変更の告示はなかったので、「旧」区間は町道となったのだろう(町議会が新たな町道路線を認定したのかどうかは確認できていない)。おそらくは新たなバイパスの建設を夢見ての国道指定だったのだと思うが、結局は既存の町道・県道の交差点改良と道路拡幅によりお茶を濁すような形となってしまい、残念である。とはいえ、新たなバイパスを必要とするほどの交通量もないと思うので、税金の無駄遣いにならずに済んでよかったというべきか。また、住宅街の間を縫うように通っている狭い道路に「おにぎり」の標識があるのもおもしろかったので、それがなくなるのは残念ではあるが、地元住民からすれば、狭い生活道路を国道にされて交通量が増えるのも迷惑だろうから、今回の区域変更は歓迎すべきものなのだろうと思う。
この公報を見て、私は4月3日に現地へと訪問してみたが、青看板や道路標識(おにぎり・ヘキサ)、デリニエータなどにはまだ変化はなかった。ただ、平成28年からすでに国道になっていた区間(県野球場南西交差点から南へ向かう道路)の一部では、すでにデリニエータの「中山町」の文字の上に「山形県」と書かれたシールが貼ってあった。

国道458号の中山・山辺区間については、これまでの歴史や都市計画についてなど、語りたいことがもっとあるのだが、なかなか時間もないので、今回はここまでとする。また現地の状況が変わったら、レポートしたい。
ちなみに、「狭隘」を「きょうあい」と読むことは今回初めて知りました・・・



